- 2024年11月15日(金)
- ハーモニーメイト先行
- ホール主催公演
- メインホール
郷古 廉 & ホセ・ガヤルド デュオ・リサイタル
- 公演情報
- 見どころ
日程 | 2024年11月15日(金) ※終了しました |
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時間 |
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会場 | 松本市音楽文化ホール メインホール |
出演者 | ヴァイオリン:郷古 廉 ピアノ:ホセ・ガヤルド |
プログラム | R. シュトラウス:ダフネ練習曲 |
チケット | 料金 全席指定 発売日 2024年9月21日(土) |
プレイガイド | ●松本市音楽文化ホール ●イベントナガノ |
チラシ | |
託児サービス | 有料・要予約/生後3カ月から未就学児まで チケットをご購入の上、音楽文化ホールにお申し込みください。 詳しくは託児サービスをご覧ください。 ※定員に達した場合、早めに締め切る場合もございます |
主催等 | 主催:一般財団法人松本市芸術文化振興財団 協力:ハーモニーメイト 企画制作:松本市音楽文化ホール |
お問い合わせ | 松本市音楽文化ホール |
プロフィール
- 郷古 廉ヴァイオリン2013年8月ティボール・ヴァルガ シオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝ならびに聴衆賞・現代曲賞を受賞。現在、国内外で最も注目されている若手ヴァイオリニストのひとりである。
1993年生まれ。宮城県多賀城市出身。2006年第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門第1位(史上最年少優勝)。2007年12月のデビュー以来、各地のオーケストラと共演。共演指揮者にはゲルハルト・ボッセ、フランソワ=グザヴィエ・ロト、秋山和慶、井上道義、下野竜也、山田和樹、川瀬賢太郎各氏などがいる。2017年より3年かけてベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏するシリーズにも取り組んだ。
これまでに勅使河原真実、ゲルハルト・ボッセ、辰巳明子、パヴェル・ヴェルニコフの各氏に師事。国内外の音楽祭でジャン・ジャック・カントロフ、アナ・チュマチェンコの各氏のマスタークラスを受ける。
使用楽器は1682年製アントニオ・ストラディヴァリ(Banat)。個人の所有者の厚意により貸与される。2019年第29回出光音楽賞受賞。
NHK交響楽団ゲスト・コンサートマスターを経て2024年4月にNHK交響楽団第1コンサートマスターに就任。
- ホセ・ガヤルドピアノアルゼンチンのブエノスアイレスに生まれる。5歳の時にブエノスアイレスの音楽院でピアノを学び始め、その後マインツ大学音楽学部でポルディ・ミルドナー教授に師事、同大学を卒業した。在学中、室内楽に情熱を抱くようになりメナヘム・プレスラー、セルジュ・チェリビダッケなどから音楽的影響を受けている。
ホセ・ガヤルドは国内外で数多くの賞に輝き、ロッケンハウス室内楽フェスティバル、ヴェルビエ音楽祭、ルツェルン音楽祭、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭など多くの音楽祭に招かれる。
ヨーロッパ、アジア、南米で頻繁にコンサートや室内楽活動を続ける中で、ギドン・クレーメル、アンドレアス・オッテンザマ等との共演を果たし、またベルリン・フィルハーモニー、ウィグモア・ホール、ウィーン楽友協会、ハンブルク音楽堂、フィレンツェのデッラ・ペルゴラ劇場、ローマ聖チェチーリア音楽院などで演奏した。
EMI、ヘンスラー、ナクソスなどからCDをリリース。SWRをはじめとするテレビ、ラジオ番組のための録音でも活躍している。
1998年から2008年にかけてマインツ大学音楽学部で教鞭をとり、2008年秋からはアウクスブルク大学のレオポルト・モーツァルト・センターで後進の指導にあたっている。
郷古廉 公演前インタビューこぼれ話
情報誌「HARMONY」232号に郷古廉さんのインタビューが掲載されました。
本ページでは本誌に載せきれなかった「こぼれ話」をお届けします。
——郷古さんといえば、サイトウ・キネン・フェスティバル松本や今年のN響松本公演など、よく松本にきていらっしゃいますよね。
実はプライベートでも松本に来ています。長野に来るとつい寄ってしまうんですよ。なじみの店でご飯食べたりして満喫してます。良い意味でこじんまりとしていて、おしゃれなお店も多いですよね。松本好きなんです。
初めての松本は『兵士の物語』ですね。2011年、17歳の時かな。当時は『兵士の物語』を演奏するのも初めてで、役者と一緒に舞台を作るのも初めてだったから、無茶苦茶面白かったですね。小澤さんも、串田さんも若いなぁ…(当時のレポートを見ながら)。思い出もたくさんありますね。演出の部分と音楽の部分が対等に渡り合っていくために、どうしたらいいのか。そのバランスのとり方がなかなか難しかった。稽古期間も2週間くらい、本番も5回ありましたしね。ここでしか経験、体験できないものでした。
——今まで様々な公演にご出演されてきました。近況はいかがですか?
変わり続けていると思います。14歳でデビューして以降、ずっとソリストとしてやってきて、2~3年前からオーケストラに関わるようになってきたんですが、オーケストラに関わることになると、それまでとは全然違う環境に身を置くことになったので、より視野が拡がったなという実感はあります。オーケストラの作品に触れていくことで、ソロや室内楽の演奏にも良い影響があると思っています。例えばベートーヴェンの9つのシンフォニーを弾いたことがあるのとないのとでは全然違うと思っていて、それを弾いたうえでヴァイオリン・コンチェルトを弾いたり、ソナタを弾いたりすると、見える景色が違ってきます。音楽的に恵まれた環境にいると思っていますし、自分の中に良い変化が起こっていると感じています。自分で言うのもなんですが、10代の頃の狭いというか一つのことを突き詰める感じだったのが、30代に向かうにつれてだんだんと広がっているというか、いろんなものに対してオープンになれていると思います。
——ソリスト、コンサートマスターであったり、オケや室内楽など、色々な形でご出演されています。それぞれの役割によって何か感じることや違いはありますか?
根本的には一緒かな。ソロ、室内楽、オーケストラ、それぞれに対しての向き合い方は、気持ちの面では根本的には一緒。ただそれぞれ求められることは全然違うので、必然的に弾き方も変わります。舞台の上にいるときの精神的な意味での姿勢みたいなものはやっぱ全然違うかな。ソロ(ソリスト)の時は音楽としてはオーケストラと一体となってというのはもちろんだけれど、一方で凛とした、というか他とは混ざらない強い音、個人としてのアイデンティティだったり個人としてやりたいことをより強く打ち出していかなければならないし、そうでないと伝わらないこともあると思う。一方でオーケストラのコンサートマスターとしては、そのオーケストラ全員でよい音楽をするというのが至上の目的なので、そのためにコンサートマスターがリハーサルの段階から指揮者とも周りのメンバーともちゃんとうまくコミュニケーションをとって、良い音楽を作れるように心がけてます。優先順位が全然違いますね。ソリストは自分が良いパフォーマンスをすることが一番だと思うけど、コンマスは全体のための自分、というのがより強いと思います。
——今回はデュオ、室内楽のコンサートにご出演いただきます。郷古さんにとって室内楽とは?
音楽上での会話を楽しむものだと僕は思っています。今回だったらホセとですが、一緒にやる相手によっても全然変わってきます。音楽に対する考え方が根本的に一致しているとやりやすいですよね。うまくいくとすごく楽しいし、うまくいかなくてもそれはそれで…面白い。人間の相性が音楽に現れるので、音楽の方向性というか、はっきりわかりますよね。お互いに違う視点を持った人間が、また別の楽器を弾いている。それをリハーサルの段階からすり合わせていく…自由度が非常に高い音楽ですよね。だからこそ楽しいのかな。
——今回のプログラムについて、何曲かお伺いしてもいいですか?
プログラムの構成にあたっては、最初から最後まで一貫した何かテーマみたいなものは常に意識するようにはしています。今回のラインアップは個人的にとても気に入っています。
最初に無伴奏のリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)の作品を入れました。以前、R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタを弾いたときに彼について調べていたら、このダフネの練習曲を見つけたんです。「für Violine solo」と書いてあって、ヴァイオリン・ソロの曲があるんだ、とすごく驚きました。彼にそのイメージはなかったので、どんな曲なのか気になって聴いてみると、約1分の短い曲でした。どのような動機で書かれたのかはわからないけれど、メロディが非常に美しくて、その1分だけでもR.シュトラウスだと感じられる作品です。いきなりシェーンベルクから始めるより、この美しいメロディからシェーンベルクに入るほうが良いかなと…。まあ、これは「お通し」だと思っていただければ(笑)。
シェーンベルクの音楽は、いびつで耳心地が良い曲ではないと思うんだけれど、彼の音楽が生まれた時代背景を考えるととても興味深い。シェーンベルクはもともと調性のある曲を書いていたが、無調の音楽に至っていく。彼は混迷の時代を生きたユダヤ人で、アメリカに渡った作曲家だった。決して順風満帆な人生ではなかったと思います。その時代に翻弄された彼の作品「幻想曲」を弾いていると、実は「ワルツ」が出てきたり、いかにもウィーン的な要素が感じられる。それらすべてがいびつで、甘さが全くなく、ざらざらとした感覚は、現代にも通じる部分があると感じています。
時代が変わっても戦争があり、僕たちは多くの課題に直面している。そんな現実から目をそらせる娯楽はたくさんありますし、見ずに生きることもできると思う。ただ、非常に難しい時代を生きて音楽で表現していた作曲家の作品を聴くことは、現代にあっても意味のあることだと思っています。ちょっと真面目な話になってしまいましたが、そういった背景を取っ払っても、純粋に楽しんでいただける面白い曲であることは間違いないので、純粋に楽しんでいただきたいですね。
ウェーベルンの「4つの小品」(1910)は僕の好きな作品の一つで、よく取り上げています。彼はシェーンベルクの生徒で、同じ十二音技法を使っていますが、まったく異なるアプローチをしています。この作品は非常に短い曲ですが、その短い時間の中で聴き手の耳を変える力があります。その後にブゾーニの調性のある音楽を聴いていただくと、よりその時代の空気感をお伝えできるんじゃないかと。ブゾーニの作品はほぼ同じ時代、少し前の1900年に書かれていますが、そう違わない時代に生きた作曲家2人が、ここまで違うものを書いている。彼らが見ているものは違うけれど、その中にも共通するロマンティシズムのような要素が存在していて、それを感じ取っていただけると面白いかなと思っています。
この曲について一つエピソードがあります。以前、小学生の前で弾いたことがあって、その時はウェーベルンの作品とバルトークの2番のソナタを演奏しました。彼らは4、5年生くらいで、当然作曲家のことは知らないし、ウェーベルンがどういう時代に生きていたかも全く知らないはずなのに、なぜかウェーベルンの評判がやたら良かった。きっと、「未知との遭遇」のような。「なんじゃこれ?」という感じで、変な音がいっぱい聞こえてくる中で、素直に楽しんでくれたんじゃないかな。僕はそういう体験が一番大事だと思っていて、「何かよくわからないけど面白い」とか「なんかすごい」と感じる音楽との出会いが彼らにとって大事なきっかけになるかもしれない。そういった体験を提供するのも、演奏家の役目だと思っています。
——最後に公演に向けて一言メッセージをお願いします。
僕が松本を大好きだということは改めて言わせてください。小澤征爾さんが遺したフェスティバルがあって、松本の人たちの中には、音楽を聴くということが身近にある。すごく文化的な街だと思っています。僕の大好きな場所で演奏できることが本当に楽しみです。とはいえ、肩ひじ張らずに、新しい体験だと思って、楽しみに来てくださるとうれしいですね。
——郷古さん、ありがとうございました。当日、楽しみにしています!
ご拝読ありがとうございました。
『情報誌HARMONY232号(9-10月号)』に掲載されたインタビューでは、ブゾーニやシューベルトの楽曲に触れています。ぜひそちらも合わせてご覧ください。